音楽 YOASOBIが他の音楽IPと決定的に違うのは、「楽曲の前段階に、原作小説IP がもう1層ある」こと。「原作小説(投稿者個人)→ 楽曲(Ayase)→ 録音原盤(SMEJ)→ アニメタイアップ(制作委員会)」という4層の権利構造が、メディアミックスの源泉になっている。
YOASOBIの権利は、積み重なった4層で理解するとわかりやすい。「原作小説の著作権(投稿者個人)→ 楽曲著作権(Ayase個人)→ 録音原盤(SMEJ)→ アニメタイアップ時の使用権(制作委員会から許諾)」という構造で、各層の権利者が異なる。
各楽曲の源泉となった小説の著作権は、monogatary.comに投稿したアマチュア作家個人が保有する。monogatary.com投稿時の利用規約で「楽曲化した場合の使用権をSMEJにライセンス」する旨が明記されており、原作者には印税の一部が支払われる仕組み。
| 楽曲 | 原作小説 | 原作者 |
|---|---|---|
| 夜に駆ける | タナトスの誘惑 | 星野舞夜 |
| あの夢をなぞって | 夢の雫と星の花 | いしき蒼太 |
| ハルジオン | それでも、ハッピーエンド | 橋崎達一郎 |
| たぶん | たぶん | しなの |
| 怪物 | 自分の胸に自分の耳を押し当てて | 板垣巴留(BEASTARSの原作者が書き下ろし) |
| アイドル | 45510 | 赤坂アカ(『推しの子』原作者が書き下ろし) |
※「群青」はAyase作詞作曲(山田鐘人「ブルーピリオド」とのタイアップ型)で、厳密には小説原作ではなく着想型のアプローチ。
作詞・作曲・編曲の著作権はAyase個人が保有。JASRAC信託管理をソニー・ミュージックパブリッシング(SME傘下の音楽出版社)経由で行っている。楽曲が配信・放送・タイアップで使われるたびに、著作権使用料(演奏権・放送権・録音権)がJASRACを通じてAyaseに流れる。
| 権利種類 | 権利者 | 管理形態 |
|---|---|---|
| 作詞 | Ayase(個人) | JASRAC信託、ソニー・ミュージックパブリッシング経由 |
| 作曲 | Ayase(個人) | 同上 |
| 編曲 | Ayase(個人) | 同上 |
楽曲の「録音物」そのものに関する権利はソニー・ミュージックエンタテインメント(SMEJ)が保有する(レコード製作者としての著作隣接権)。ストリーミング配信・CD販売・映像への楽曲同期(シンクロ)の際に、この権利に基づく対価がSMEJに入る。AyaseとikuraはそれぞれSMEJと演奏家(実演家)として契約しており、著作隣接権の一部を共有。
| 権利種類 | 権利者 | 備考 |
|---|---|---|
| 録音原盤(マスター) | SMEJ | 著作隣接権(レコード製作者) |
| 実演(Ayase) | Ayase個人 | 演奏家としての実演権 |
| 実演(幾田りら) | 幾田りら個人 | ボーカル実演権 |
「アイドル」「怪物」のような大型アニメタイアップ時は、楽曲はSMEJ所有のままだが、アニメOP/ED映像に使う際に別途制作委員会(アニメ側)から使用許諾(シンクロライセンス)が必要。アニメ全話視聴・DVD売上・配信に楽曲使用料(シンクロライセンス料)がSMEJに還流する。
代表例「アイドル」(TVアニメ『推しの子』OP)の制作委員会構成: 集英社(原作出版)、東映アニメーション(制作)、CyberAgent(製作出資)、KADOKAWA(製作出資)等。
| 収益系統 | 主な内容 | 規模感・特記 |
|---|---|---|
| ① ストリーミング・配信 | Spotify / Apple Music / YouTube Music / Amazon Music / LINE MUSIC等 | 累計60億再生超(2024年時点推計)。「夜に駆ける」12.3億回、「群青」8.4億回。1億回超え楽曲21曲は国内アーティスト最多水準 |
| ② アニメ・ドラマタイアップ(シンクロライセンス) | BEASTARS、ガンダム水星の魔女、推しの子、ポケモン等 | アニメ放映→ストリーミング増加の双方向循環。大型タイアップは毎回チャート上位入りのトリガーになる |
| ③ ライブ・コンサート | 国内アリーナツアー / アジアツアー / 米国6都市ツアー / コーチェラ・ロラパルーザ等フェス出演 | 2024年NY Radio City Music Hall(5,960席)・ボストン MGM Music Hall at Fenway(5,000席)満席。ライブ収益は急成長段階 |
| ④ CD・グッズ販売 | EP「THE BOOK」「THE BOOK 2」「THE BOOK 3」(完全生産限定盤)/ 英語版EP「E-SIDE」「E-SIDE 2」/ マーチャンダイズ | 限定生産形式のため大量販売モデルではなく「ファン向けプレミアム」商品。CD商法とは設計思想が異なる |
| ⑤ 出版・メディアミックス | 「夜に駆ける YOASOBI小説集」(双葉社)/ 「THE BOOK」シリーズ書籍版 / 「たぶん」映画化等 | 楽曲の原作小説を書籍化することで「楽曲→小説→書籍購買」の逆引き経済を生む画期的施策 |
YOASOBIのエコシステムにおける各プレイヤーの役割と関係性を整理する。
YOASOBIのビジネスモデルが業界にもたらした4つの新規性: