マンガ 連載5年で4,000万部超、劇場版全世界8,800万ドルというスピード成長を遂げたSPY×FAMILYの転換点を6つ選びストーリー形式で深掘りする。
遠藤達哉は過去に週刊少年ジャンプで2作品が打ち切られた経験を持つ。3作目のSPY×FAMILYは、週刊少年ジャンプ本誌ではなく、Webマンガアプリ「少年ジャンプ+」でのスタートを選んだ。
ジャンプ+は無料(一部有料)でアプリ閲覧でき、かつManga Plusで世界同時公開。連載開始から英語・スペイン語・ポルトガル語の読者がリアルタイムで付いた。「Web連載はアニメ化できない」という業界の常識を、SPY×FAMILYが完全に覆した。
MANGA PlusはSPY×FAMILYを世界200カ国以上で無料公開。コロナ禍で自宅にいる世界中の読者が「無料で読める面白いマンガ」として発見し、英語・スペイン語圏でのファン数が急増した。
連載当初から海外読者が積極的にSNSで共有し、Twitterで「SPY×FAMILY」が英語圏のトレンドに入り始めた。アニメ化前の2021年末時点でMANGA Plusの月間ユニーク読者が数百万人規模に達していた。アニメ化決定時にはすでに世界規模のファンベースが形成されていた。
通常は1スタジオ1作品の元請け体制が業界標準だが、SPY×FAMILYはWIT STUDIO(進撃の巨人で知られるアクション特化)とCloverWorks(キャラクター作画に強い)の共同元請けという前例のない体制を採用。
第1話放映後、Crunchyrollのリアルタイム視聴数が歴代トップクラスを記録。「アーニャ」の表情がすぐTikTokミームになり、アニメを見ていない人にもキャラクターが伝わる現象が生まれた。「ミームとして世界に拡散されるキャラクター」という現代のIP普及メカニズムの典型例になった。
Crunchyroll(北米・欧州)+Netflix+Disney++Amazon Prime Videoの4プラットフォームに同時配信するという、当時は前例のない戦略を採用。通常は単独プラットフォーム独占が多い中、「排他的契約を結ばない」という意思決定をした。
これにより、どのサブスクサービスに入っていても世界中でSPY×FAMILYを観られる体制が完成。フランスの視聴者はNetflixで、北米の視聴者はCrunchyrollで、英国の視聴者はAmazon Primeで、それぞれのサービスでTOP10に入った。「グローバル最大リーチ」を単独プラットフォームへの依存なしに達成した新モデル。
アニメ2期放映中の2022年末時点で、SPY×FAMILYとのタイアップ企業がNTT・パナソニック・日清食品・ライザップ・JR東日本など30社以上に達した。少年マンガIPが一般消費財・インフラ・大企業とのコラボに広く活用されるのは極めて異例。
「アーニャ(子ども)× ロイド(仕事ができる父親)× ヨル(かっこいい母親)」というキャラクター設定が、「家族全員が楽しめるIP」「職場でも家でも話題になるIP」というブランドポジションを作った。ニチアニの「ファミリー向け×サラリーマン向け」という二重のターゲットが、企業コラボの幅を広げた。
国内興行60.6億円、全世界8,800万ドル。「Webマンガ原作 → 劇場版 → 全世界興行」のパイプラインが完全に機能することを証明した瞬間。
特筆すべきはフランス(Crunchyroll配信エリア)・北米・東南アジアでの同時ヒット。従来の日本アニメ劇場版は「日本国内 + アジア一部」に偏りがちだったが、SPY×FAMILYは4プラットフォーム配信による認知が劇場版への動員につながった。「配信での認知 → 劇場版動員」というデジタル時代の新しい興行モデルを体現した作品。