マンガ 38年連載で1.2億部、GUCCI・国立新美術館・イタリア観光まで広がったジョジョのIPの歴史の中で、運命を変えた決定的瞬間を7つ選びストーリー形式で深掘りする。
荒木飛呂彦は前作「バオー来訪者」(1984-1985年)が短期打ち切りになった後、ジョジョの奇妙な冒険を開始。連載当初はDRAGON BALL・北斗の拳の全盛期であり、ジョジョは「アクション系の新参」として始まった。
荒木のデッサン力と独特のポーズ(後に「ジョジョ立ち」と呼ばれる)が読者の目を引き、ゆっくりと固定ファンを形成していった。「主人公を世代交代させるながら1作品を続ける」という前例のない構造(Part 1の主人公ジョナサンが死に、Part 2はジョセフ、Part 3はジョタロー…)がジョジョの最大の発明だった。
1993年にOVA(OVA=映像ソフト直販)でPart 3「スターダストクルセイダース」がアニメ化。TVアニメではなくOVAという限定的な展開だったが、欧米のアニメファンの間で「知る人ぞ知る名作」としてカルト的支持を得た。
TVアニメ化まで25年の空白期間があったことで、コアファン文化が非常に深く育った。「ジョジョ立ち」「スタンドの能力考察」「荒木イズム(荒木独特の哲学的テーマ)」などのファン文化が確立され、2012年TVアニメ化時に「新規が入れるほどの洗練されたコンテンツ」として迎えられた。
連載開始から25年後、ついにTVアニメ化。David Productionというスタジオが手がけた第1作は、荒木の独特なカラーリング・コマ割りをアニメに忠実に再現することに成功した。
初回放映後、「ジョジョ立ち」「だが断る」「オラオラ」などのセリフがTwitterでトレンド入り。25年待ったコアファンと初めてジョジョに触れる新規が同時に熱狂した。Crunchyrollで配信され、英語圏でも「ついにTVアニメ化!」という熱気が広がった。「遅すぎたTVアニメ化」が「最高のタイミング」になった。
Part 5「黄金の風」の舞台はイタリア。GUCCIの本社はフィレンツェ(イタリア)。この地理的・文化的重なりに着目したGUCCIクリエイティブディレクター(当時)がジョジョとのコラボを提案した。
2011〜2013年のコラボでは、GUCCIの高級ブティックでジョジョのキャラクターをフィーチャーしたアート作品を展示・販売。マンガIPがハイファッションの文化資本に組み込まれた史上初の例として業界に衝撃を与えた。2021年の第2弾はGUCCI Ariaコレクションとの連動で、より世界的な注目を集めた。
手塚治虫・水木しげる・井上雄彦に続く、マンガ家の国立美術館個展。累計来場者18万人、展示品グッズが完売。海外からの観覧者も多数来日した。
展示テーマは「荒木飛呂彦の奇妙な世界」。単なるマンガ原画の展示ではなく、「現代美術家としての荒木飛呂彦」という文化的位置付けの再設定だった。批評家からは「ジョジョはマンガではなく美術だ」という評価が出始め、ハイカルチャーとポップカルチャーの境界を越えた。
Part 6は集英社とNetflixの独占契約で世界同時配信。それまでCrunchyrollで配信されていた過去Partと異なり、Netflix独占という形は業界でも珍しかった。
「Part 6の主人公は女性(空条徐倫)」であることが、女性ファン・多様性重視のNetflix視聴者層に刺さった。英語圏Twitterで「Part 6のストーリーは今の社会問題と繋がる」という考察が拡散。マンガIPが「多様性・ジェンダー」という現代的価値観と結びついてメインストリームに届く新しい形を示した。
Part 5「黄金の風」のナポリ・フィレンツェ・ヴェネツィアを訪問するファンが急増。ナポリ観光局が2019年に「ジョジョ聖地マップ」を公式公開。イタリア国鉄がジョジョファン向けの観光ルートを案内するようになった。
GUCCIコラボ(フィレンツェ)と国立新美術館展(東京)で高まっていたジョジョのブランド価値が、リアルな観光経済に転換した瞬間。「マンガIPが国際観光を動かす」という新しいソフトパワーの形。Star Comics(イタリア翻訳)の累計部数も聖地巡礼ブームと連動して拡大した。