BTS擁する韓国最大手HYBEがSM Entertainment創業者Lee Soo-manから14.8%株式を3,343億ウォン(約$334M)で取得し買収を仕掛け、Kakaoが対抗テンダーオファーで応戦した約7週間のM&A戦。Kakaoがテンダー価格150,000ウォン(HYBEは120,000ウォン)でSMの39.87%を取得して勝利、HYBEは取得分を売却して撤退(推定$440M回収、+25%売却益)。
SMは1995年Lee Soo-man創業後、Lee個人会社「Like Planning」がSMから多額のプロデューサーフィー(2017〜2021年累計約1,400億ウォン)を受け取る構造で、長年ガバナンス課題が指摘されていた。2022年にアクティビスト株主Align Partnersが改善要求を強化、2023年2月にSM経営陣(CEO Lee Sung-su・Tak Young-jun)がLike Planningとの契約終了を発表し、Lee Soo-manとの内部対立が顕在化した。
2023年2月3日、SM経営陣はKakaoに新株・転換社債発行で9.05%売却・2,200億ウォン調達を発表。これに反発したLee Soo-manは2月10日、HYBEに自身の保有株14.8%を3,343億ウォン(約$334M、株価120,000ウォン)で売却し、HYBEがSMの最大株主に躍り出た。同日HYBEは残り25%取得を目指すテンダーオファー(120,000ウォン/株)を宣言した。
2月22日、Lee Soo-manがソウル中央地裁にSM-Kakao新株発行差止仮処分を申立て、認容された。これでKakao陣営は劣勢に立たされたが、3月7日に逆襲のテンダーオファーを宣言。価格150,000ウォン/株(HYBE比+25%)、目標35%、総額約1.25兆ウォン(約$960M)の大型攻勢に出た。
HYBEは3月12日にテンダーオファー目標の達成1%未満と発表、3月14日にSM経営陣との和解協議を開始。3月24日にHYBEはKakaoのテンダーへ全株売却を表明し、150,000ウォン×14.8%≒約4,400億ウォンを回収(取得価120,000ウォンとの差で約$110Mの売却益)。3月28日、Kakao陣営は合計39.87%でSM筆頭株主の座を確定した。
| 主体 | テンダー価格 | 目標株数 | 想定総額 | 結果 |
|---|---|---|---|---|
| HYBE | 120,000ウォン | 25% | 約1.0兆ウォン | 達成1%未満、撤退 |
| Kakao | 150,000ウォン | 35% | 約1.25兆ウォン | 約44%応募、比例配分で35%確保 |
| Lee Soo-man → HYBE売却 | 120,000ウォン | 14.8% | 3,343億ウォン | 完了 |
| HYBE → Kakao売却 | 150,000ウォン | 14.8% | 約4,400億ウォン | 完了、+25%売却益 |
韓国エンタメ最大手HYBEがSM買収に失敗したことで、結果として「テック大手(Kakao)×コンテンツ事業者」という新たな支配構造が確立された。Kakaoは2021〜2023年に1.7B USDをエンタメ買収に投じ、メッセンジャー → Melon → Kakao M → ウェブトゥーン → 映像 → SMという段階的垂直統合を完成させた。
HYBE(120,000ウォン・25%)vs Kakao(150,000ウォン・35%)の競合は、価格・タイミング・法廷戦・第三者株主のエクスポージャーが揃った教科書的M&A事例。プレミアム25%差が決定打となり、HYBEは結果的に撤退ながら売却益を獲得する非対称結果に。
Lee Soo-manの強制退陣・A2O Entertainment再起業(2024年)と、対照的にPark Jin-young(JYP)の段階的経営退任→クリエイティブ専念(2026年)。創業者出口の典型2パターンの対比軸として、業界研究で頻繁に引用されることになった。
Kakao Melon(韓国最大音楽配信)がSMアーティストの音源を独占的にレコメンドする構造は、Spotify/Universalのアルゴリズム露出問題と類似。2025年5月にはTencent Music Entertainmentが、HYBEが残していたSM株式の一部を取得し間接的No.2株主化との報道(KED Global)も登場し、東アジアテック資本のK-POP事業への深い関与が明らかになった。
HYBEは2月10日のテンダー価格を120,000ウォンに設定したが、これはLee Soo-manからの相対取引価格と同水準。結果としてKakaoに+25%プレミアムを上乗せされる余地を残し、価格戦で完全に劣後した。「相対取得価格=公開買付価格」の硬直的設計が敗因の一つ。
Like Planningへの過大なプロデューサーフィー構造は2019年のKB Asset Management公開書簡で既に問題化していたが、SM側は2022〜2023年まで根本対応を遅延。アクティビスト株主の累積要求が経営陣の反乱を招き、結果として創業者を会社から追放するレベルの紛争に発展した。
出典: KED Global — Timeline of HYBE's failed bid for SM / KED Global — HYBE accepts Kakao's tender offer / MBW — HYBE's takeover plan falls short, Kakao launches $960m offer / Variety — HYBE and Kakao End Hostilities / Korea Herald — Lee Soo-man joins hands with Hybe / CNN Business — Kakao wins control of SM / Korea Herald — Kakao founder acquitted / KED Global — Tencent to become SM's No. 2 shareholder